Project

壁の記憶

3-17_310
/ 2024


古い灰色

新しい灰色


今を確かめるために
こらからを考えるために

その2つの灰色を、ぼんやりと眺める


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『壁の記憶』

人間に記憶がなかったら、自分がどう生きるかを考えたり、どんな行動をとれば良いのかという正常な判断ができないそうだ。今の状態を知ること、何をどうすれば何ができるのか、脳に貯められていった過去の情報をもとに、今の自分を確認し、これからの自分を動かしていく。
記憶には、「覚える」「持ち続ける」「思い出す」の3つのプロセスがあるという。 素敵だったことや詰まらなかったこと、自分が体験したさまざまな感情や経験が、脳の中の情報にかわっていく。もしも、経験したことを忘れてしまい、この先二度と思い出すことがなかったとしたら、その経験は、ただの”過去”になってしまうのだろうか。
自分らしく進み続けるために記憶があるとしたら、過ぎた何かを思い起こし、今とこれからを時折考えてみる必要があるのかもしれない。

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居住空間の改装に伴って計画した壁掛け時計/

2000年に建てられた二階建木造住宅。2階リビング・ダイニングの壁には、青みがかった灰色の壁紙が貼られていた。その灰色の反射は、その場の温度、空気の重さ、物質の硬さを、ある一定の質に収める役割を担っているようだった。しかしながら、竣工から23年という経年の劣化で、糊の汚れや剥がれなどが生じ、壁紙としての美観と性能はすでに失われていた。「竣工当時の新鮮さの再現」と「洗練した空間に整え直す最小限の修正」を改装の目的としていたため、灰色の壁紙は全て剥がし、下地を整えた後、灰色の塗料で新しく塗り替える計画となった。
剥がした壁紙の一部を残しておき、「壁の記憶」として新たな空間の一部に引き継ぐことを考えた。

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円形フレームは、φ120mmxH40mmのステンレス製のケーキ型を使用。盤面は12mm厚のMDFボードを使用している。ムーブメント、時針・分針・秒針を組み込み、深さ40mmのフレーム枠に丁度納めた。壁紙は、アルカリ洗剤と中性洗剤で汚れを落とし、盤面とフレーム側面に貼り合わせた。フレームの小口と内面、時針・分針・秒針は、市販の工作スプレーの中から相性の良い灰色を選び塗装した。盤面には、時間を正確に表すための数字や印は入れていない。裏面には熱転写でコンセプトとサインを印字した。壁掛けのための吊り金具の収まりが悪かったため、MDFとムーブメントの間を金具の厚み分掘り込んで組み込んでいる。

壁の記憶
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