気持ちを届けるために、
声を出す。
気持ちを受け取るために、
耳を澄ます。
隔たりを超えるために、
今できることと真っ直ぐに向き合う。
-
『声で伝える』
滋賀県立大学 生活デザイン学科 23期生 卒業制作優秀者 3名に授与されたトロフィー。
人の暮らしのかたちが激変したこの一年。人と人との物理的な距離の取り方や、触れ合うことへのルールと意識が変わっていくなかで、大切なことを伝えるため、大切なことを受け取るために、これまでの惰性では乗り切れない工夫と努力が必要とされている。
このトロフィーには、拡声器・集音器としての機能を持たせている。琥珀色の開口部に口を当てて話すことで自分の声を前へと届け、耳を当てることで周囲の音を集めることができるよう計画した。
距離やマスクなど物理的な隔たりがある中でも、人が発した声は、周囲の空気を押し出し、音の波として直接人まで届き、耳の鼓膜を振動させている。喜びや感謝の気持ち、称賛や労いの言葉を、今しかない、この一瞬の想いを、生きた声を通して直接伝えあえる授与式になることを願った。
-
トロフィー本体は、エポキシ樹脂、真鍮、モルタルの3素材を使いインサート成形している。密度・重さ・安定を感じさせる無彩色のモルタルを下部に、透明・ 清潔・軽やかさを感じさせる透明樹脂を口と耳に触れる上部に選択した。外型が六角錐、内型が円錐の同形状の対比的な二つの素材を金管で繋ぎ合わせることにより、長いトンネルの先にある明るい未来へと"質"が変化していくイメージをかたちに込めている。
ハンディワークで使用する透明樹脂は、紫外線などの影響による黄変を防ぐことが難しいため、予め琥珀色に着色することで経年変化を抑え、真鍮素材との色の調和と、上品さの演出に昇華させることを考えた。さらに脱型時の曇った樹脂の表情を残しつつ、口と耳に触れる端面のみを鏡面研磨することで、注型時の混入気泡を際立たせ、軽やかさの表情として表現している。また、エッジをなめらかにすることでデリケートな体の部位に触れることへの安全面を考慮した。
金管部は外径φ40ミリの真鍮パイプを加工し、エッチングによる凸文字でタイトルと受賞者名を刻んだ。薬品による焼け跡や酸化ムラをそのまま残すことで、3体それぞれの個体差がうまれている。
パッケージは12号黒ボール紙と4号花火玉皮を使って製作している。トロフィーの形状に合わせた六角柱の筒箱に半球がついた蓋が乗っている不自然な形状で、蓋を開けるとトロフィーの上部が筒から少しはみ出るサイズになっている。そこには、既存の規格にはまらない新しい世代のエネルギーに期待する想いをかたちとして込めた。
-
-
//Box
-
//Concept
-
//Plan
-
//Process