Project

NEWOLD KEY

"Spring is just around the corner." / 2015 -

ある春の日に考えた事...

春は始まりの季節。
手に馴染んだ鍵を手放して、
新しい鍵が、ひとつ増える。

これまでの日常。
これからの日常。

日常が変わる瞬間に、鍵もまた変わる。


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『新しさと古さ』

新しさに感じる緊張感、張り詰めた素材の温度。
人とモノがはじめて触れあう瞬間、それぞれの原子にあるプラスとマイナスの電子が移動を始めるそうだ。
目には見えないところで、人はモノと触れ合う瞬間に、そのモノとの距離を体で感じとっている。

新しさを感じるものは、これからの時を感じさせる「余白」が含まれた素材のカタチと表層を纏っている。
古さには、これまでの時の影響を積み上げてつくられた唯一のカタチと、私の経験と記憶の中にある時との重なりがある。
材質からではない心が感じ取る温度は、ぬるく温かい。
そして、ゆっくりとした時間の中に佇み、くすんだ映像として浮かび上がる。
良くも悪くも、現在までの積層と経過の形からのみモノは存在している。

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そんな感覚を形にしてみると、
歪な形に磨き上げた真鍮の鍵ができました。
ひとつひとつ異なる表情で、経年変化しながら少しづつ色合いも深まっていきます。

既製の錠前を研磨して製作しています。
錠前として使うこともできますが、
鍵を束ねておくための道具として、時の経過を感じながら長く持ち続けていくのも楽しみです。

NEWOLD KEY
錠前と鍵のセット
歪な形
ひとつひとつ異なる形
研磨加工
磨く
歪んだ形の記憶